自宅から最寄駅へ向かう途中、ケーキ屋から漂う焼きたてクッキーの香りが朝から幸せな気分にしてくれる。不思議なことに香りそのものを思い出すのは難しいが、香りをきっかけに記憶や感情が鮮明に蘇ることがある。例えば、街中で嗅いだ香水やシャンプーの香りで昔好きだった人を思い出したり、懐かしい香りで幼少期が蘇ったりするような経験は多くの人に共通するものだろう。このように特定の香りが記憶を呼び起こす現象は「プルースト効果」と呼ばれ、嗅覚と脳の関係で説明される。嗅覚は五感の中でも原始的で、獣の匂いを察知したり、食物の腐敗を判断したりなど古くから生命の維持に役立ってきた感覚だ。現在、この効果を使って認知症の記憶回復が研究されている。日常でこのプルースト効果を日常で活用する方法としては、まず香りで感情をコントロールする方法がある。緊張をほぐしたいときや勉強の合間など場面に合わせた香りを使用することで、リラックスやリフレッシュ効果が期待できる。2つ目は、身につける香りを工夫し、周囲に与える印象を演出する方法である。香りを使ったセルフブランディングを楽しむことで、自分らしい印象を持ってもらうことができるだろう。香りの力を借りて、幸せな記憶を思い出したり、リラックスされてみてはいかがだろうか。