株式公開と聞いてまず思い浮かぶのは、ストックオプションと持株会である。私はこれら両方の制度を経験した。ストックオプションとは、あらかじめ決められた価格で自社株を購入できる権利のことである。この価格(権利行使価格)より市場価格が高ければ、権利を行使してその差額を利益とすることができる。しかし、市場価格が権利行使価格を下回る場合、全くメリットがない。このため、自社株の価格動向を常に注視することになるが、権利を行使した後は株価への関心が薄れる傾向がある。一方で、持株会は頻繁に売買する仕組みではないため、自社株への穏やかな関心が持続する。日本企業には、この持株会の方が馴染むと私は考える。また、株式公開を果たした企業は、いずれプライム市場を目指してステップアップするだろう。私が以前勤めていた企業が東証1部に上場した際、その背景には、知名度の高い企業が1部から降格したというニュースがあった。これを機に、社内制度が世間水準以上に整備され、厳しい条件をクリアしたことに社員として誇りを感じたものである。社員が誇りを持てる環境を整えていくことで会社のランクを上げることが出来るのではないだろうか。