現在、化石燃料が世界のインフラを支えているが、資源の枯渇やCO2の排出など、様々な問題が指摘されている。そのような中で次世代のエネルギーが期待されているが、そのうちの一つ水素エネルギーに注目したい。水素はCO2が発生しない。とは言え、水素燃料などで現在流通している水素は95%がグレー水素と言われる石油や天然ガスから抽出される水素であり、結局はCO2が排出されてしまう。再生可能エネルギーを用いて生成されるクリーン水素の普及が急務だ。水素を扱う技術は様々な企業が研究開発しているが、川崎重工業もその1社だ。大気中の水素を電気分解すると莫大なコストが掛かり、実用化には程遠い。川崎重工業は水素を作るために、褐炭(かったん)という安価な物質をオーストラリアから購入しているが、褐炭は自然発火する危険があり、扱いが難しい。40年以上前から天然ガスを-162℃に冷やして液体の状態にして運搬を行っているという実績がある同社は、その技術を流用して水素を-253℃に冷やして液体の状態で運搬する「すいそふろんてぃあ」という運搬船を開発し、更に安全性を高めた運搬を実現している。日本が技術立国と言われたのは過去のものという声も聞くが、川崎重工業による水素の生産、運搬技術は世界でも最高峰である。IT系とは業種が異なるが、最新技術は日本にもまだまだ存在する。そんな技術が開く未来を見逃さないようにしたい。